リスキリングの推進には社員のエンゲージメントが重要。それには企業内大学の設計が成功の鍵となる
リスキリング
企業内大学
2024/5/10

こんにちは、オフィスク編集部です。
前回の記事 DX化が進む中、企業の組織におけるリスキリングが待ったなしのワケ では、リスキリングが急務である背景を説明しました。
続編であるこの記事では、企業の人事が社員のリスキリング推進に取り組むにあたって必要な要素と準備事項を整理します。
リスキリングに必要とされるスキルの把握と整理
適切なリスクをマッピングしつつ、最終的にはデジタル人材に問われるスキルを網羅的に学習して行くことが望ましい
デジタルと一言で言っても、企業の社員が身につけるべきスキルは、幅広いです。
例を挙げると、特定の技術、インターネットなどの業界トレンド、デザイン思考やアート思考などのデジタルパラダイムにおける考え方、データを扱えるリタラシー、そしてリモートワーク・テレワークが普及したオンラインの働き方におけるコミュニケーションなど、キリがありません。
企業の事業領域によっても、業界によっても、変わります。DX化が進んでいる業界とそうでない業界もあります。
世間一般的には管理プロセスはデジタル化が進んでいますが、業界によってはセールスでの慣習やマーケティングプロセスもデジタル化が当たり前になっていれば、その波に乗り遅れてしまうというリスクが、リスキリングへの優先度を高めるという考え方もあります。
まず必要なことは、その企業および事業環境にとって優先度の高いスキルを洗い出して、整理することから始めましょう。
リスキリング対象となるスキルのマトリックス
リスキリング対象のスキル領域は大きく分けると4つのマトリックスに整理できます。縦軸がスキルの種類(ソフトスキル vs. テクニカルスキル)。横軸がリタラシーレベル(エントリーレベルかアドバンスドレベル)です。

#リスキリングに必要とされるICT/ビジネススキルの一覧
もっとも簡易的に始められるのは、ICT活用術やデジタルを活用した働き方の生産性向上です。
例えばアウトルックやexcelは、ソフトウェアとして社員に配布されていても、リタラシーが低い社員が多い場合は、それらをフル活用してメリットを得られるだけの情報管理はできていないことになるので、そこのテクニカルスキルを向上させるだけで労働生産性を上げることが可能です。
テクニカルリタラシーでパソコンスキルやインターネットスキルが分かる方には、データのスキルやデザインリタラシーなどが習得すべきスキルになります。
それより次のステップでは、ウェブサイトがノーコードツールで作れる、データの統計分析ができる、などができると、かなりのDXスキルと言えるでしょう。
最終的には、最もアドバンスドなテックスキルでは、プログラミングや機械学習などがあります。
一方、リスキリングにおいては、テクニカル = ハードスキルのみならず、ソフトスキルの学び直しも重要です。
例えば、オンライン化した働き方においては、ハードスキルはZoomの使い方ですが、ソフトスキルは、リモートにおけるコミュニケーションや気遣いのあり方ということになります。
デザインにおいては、ハードスキルはCanvaやfigmaの使い方、あるいはグラフィックデザインのカラーやレイアイトのセオリーなどもテクニカルの領域に入っているかも知れません。ソフトスキルはデザイン思考、クリエイティブ思考、発想力、ブレインストーミング力などになるでしょう。
組織におけるスキル習得の現状把握と可視化
DX成果創出の壁となるのが、ITリテラシーの格差の存在です。
クラウドやペーパーレス導入のメリットをフルに活かすには、前提としてデジタルを正しく捉えて使いこなすITの基礎的なリタラシーが必要です。
その上に、デジタルの理解が乗っかって初めてDXに取り組むことができます。
アウトルックやExcelを使いこなせていない社員に対してDXの即時効果を求めることは難しいと言えるでしょう。リタラシーとは、何層にも重なる理解があって、深みがあって初めて成立する概念なのです。
組織におけるリスキリングで効果を生み出すには、まずは社員の現状のスキルマップや、スキルデータベース構築の作成、すなわち「スキルの可視化」に企業として取り組む必要がああります。
把握をしないと順序も優先順位も決められません。
これはリスキリングや学習プロセスを立ち上げるより前に、事前に行っておく必要があります。
LMS(学習管理システム)の導入が鍵となる
またリスキリング実施中においても、対象社員の反応や進捗をモニタリングしつつ範囲を広げたり対象者を増やして行くことが重要となりますので、
把握したあとの整理を正しく捉えるための「マッピング」がきちんとできているかが鍵となります。
それらができたら、マップに対して各々がスキル習得の進捗を図ることができる必要があります。
このためにはLMS(ラーニング・マネジメント・システム = 学習管理システム)の導入が必須となります。
LMSがない状態だと、組織全体としてのスナップショットはわかっても、各々の社員が何を次に学べば良いかが分からないという混乱が起きてしまいます。
LMSについては、本記事よりも詳しいリソースがありますので、それらをご紹介します。
社員の自主的な学習を促進できるプログラムの運営:企業内大学のすすめ
自学習推進が必要なワケ
スキルやリタラシーには個人差があり、当然ながら学習すべき領域や開始レベルも異なります。
またリスキリングには継続的に学ぶことが問われるため、社員が自ら学ぶ領域やペースを決めて、自主的に取り組むことが重要です。
一律同じ教育を施すのではなく、社員各々がコンテンツや学び方を選んで自学習ができる教育プログラムが推奨されています。
企業人事が社員が各々自ら選んで学習できるために運営するプログラムは「企業内大学(社内大学)」と呼ばれます。
企業内大学とは
社員一人一人のWillを育むために、トップダウンや一律研修ではなく、豊富なメニューから社員に選んで学習して貰う、「”企業内大学” = 自主参加型の教育制度」を導入する企業人事が増えて来ています。企業内大学は、企業によっては、社内大学、社内ユニバーシティなどの名称で呼ばれることもあります。
社員が学びたいものを各々選んで自ら学習する領域や時間を決める、つまり社員の自主性を重んじるというところが、従来型の階層別研修との大きな違いです。
自主性の尊重は社員の能動性とエンゲージメントにつながり、それがスキル獲得に重要だとして、最近ではリスキリングやアップスキリングの推進エンジンとしても、企業内大学の存在がより重視される傾向が強まってきています。
企業内大学についてのより詳しい解説は以下の記事も参考になります。
https://www.e-sanro.net/jirei/university/
https://schoo.jp/biz/column/1067
企業内大学で、自学習を促せるコンテンツとは
企業内大学では、社員が学ぶスキルや領域を「自ら選ぶ」というところが自律性や能動性を育むために重要なポイントですので、用意するコンテンツは、多くの階層やポジションに選んだり組み合わせてキャリアを作って行く選択肢を与えるために、「バラエティ」を揃えることが、重要です。
また個別に何を学ぶかについては、社員の上長は、推奨・推薦 = 勧めることは良しとされていますが、強制力を働かせるべきではなく、何を学ぶかは、最終的に個人の判断を尊重してあげることが重要とされています。
企業内大学で提供するコンテンツには、大きく分類すると3タイプの提供形式で用意をすることが望ましいと言われています。
1)本やオンラインなどの 「インプット用の自学習コンテンツ」、2)アウトプットの場にもなり得る 「参加・体験型のコンテンツ」、そして3)個人の成長とキャリア形成を促すための 「振り返りの場の提供」、
上記の3つの場を揃えると、スピード感と効果が出るリスキリングが実現できると言われています。

#社員の自学習を促せるコンテンツとは
「インプット用の自学習コンテンツ」について
自学習コンテンツの良いところは各、々が自らのペースで学習を進められる点にあります。
企業人は日々現場の仕事で忙しいので、まとまった時間を取ったり、仕事とは別軸で動く学習プロセスに合わせてスケジュールを組むのは大変です。
スキマ時間や空いた時間を使って自らのペースで学習できる教材の用意は必須であると言えるでしょう。
「参加・体験型のコンテンツ」について
自学習コンテンツの限界は、その自由の代償としての強制力のなさや無機質さにあります。
教材はあくまで教材であって、学習意欲やモチベーションの全ては学習する本人の意志に委ねられてしまいます。
多くの社会人は、教材があってもやらない、始めても終えることができない、継続できないという問題を抱えてしまいます。
またテキストや動画と言った一方通行の情報ではフィードバックが無いので、質問したり、自分が正しい方向性に行っているのか、正しく身につけられているのかなどをタイムリーに確認する相手が欲しくなってしまいます。
そこで一定程度、参加・体験できるコンテンツも用意する必要があります。
公教育においても、反転教育という手法が流行っていますが、演習などは教材を使った自学習を前提としていても、そのあとには必ず生徒が教師と共にインタラクションする場が定期的に設けられています。
人はやはり誰かとコミュニケーションをすることで、腹落ちしたり、刺激をもらったり、疑問が湧いたりするものです。
企業の学習においても、不定期でも頻度低くても良いので、人が介在する参加型、体験型の場があることが重要です。
「振り返りの場の提供」について
最後に、人材育成において、学習はインプットですが、成長を促すためにはアウトプット(仕事で実践してみること)およびそれに対する定期的な振り返り(内省)が必要です。
また学習をどう生かしてキャリアを作るのかということについても、個人の選択や未来には正解がないので、意思決定に自信をつけさせるためにも、定期的な対話およびガイダンスが必要とされています。
キャリアカウンセリングであったりコーチングであったりということを導入する企業人事が増えているのはこの目的のためです。
特に企業内大学を準備して社員に仕事以外での学習を促す上においては、振り返りの場の提供は促進剤としても必須であると言えるでしょう。
組織で学びを浸透・継続させる土壌作り:企業内大学でのエンゲージメントを高めることの重要性

#学びを推進できる仕組み作り
リスキリングを本格的に活性化させるには、良い設計や充実したプログラム設計も重要ですが、それら準備事項のみならず、組織内で活性化できるための風土やカルチャー作りも同じくらい重要です。
学びに対する社内の価値観・スタンス形成ができているか
社員が学びに時間を使うことが社内で推奨されていることは、とても重要です。
社内とは、人事担当者のみならず、社員の直属の上長を含みます。つまり中間管理職にその理解が広く浸透していることが重要です。
そうで無いと、社員はリスキリングをして欲しい人事と、それより日々の現場の仕事を優先して欲しい部署の上長との間に挟まれて、板挟みになり、ひいては学びに対する自主的な意欲が失われてしまいます。
またもう少し中長期的な目線では、組織内で社員が自己投資することが将来リターンとして返ってくるように、人事評価や報酬制度ときちんと連動がなされていることも極めて重要です。
学んだけど職務階級が上がらないのでは、学び損だと社員が思うようなインセンティブ設計を放置してしまうと、なかなか活性化はされません。
またリスキリングの成果に基いて、人材配置の流動性が組織全体で認識・推奨されていることも重要です。
それらがあって初めて社員は学んだスキルを実践する場を与えられます。アウトプットの場は刺激になり、更なる新たなスキルを学び続けるモチベーションにつながります。
リスキルされた社員を受け入れる土壌がデジタル関連部署に無いと、デジタルはいつまでたっても特定領域の専門職に留まってしまい、幅広い層によるデジタル移動が阻害されてしまいます。
流動性があって初めて、社員がウィルを持てる土壌や環境作りが実現すると言えるでしょう。
まとめ
企業において社員のリスキリングを推進させるには、個人による活性化が肝となります。それを促進させるためには、企業内大学を通じて自学習を促せる豊富なコンテンツと自由度を担保すること、そしてそれらを活用して主体的に学ぶ社員のエンゲージメントを促進する組織風土と人事制度が必要である、ということになります。
以下、社員の自主的な参加およびエンゲージメントを推進できている企業内大学の事例記事になります。
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