オフィスク 編集部
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研修運営ノウハウ
2026/7/27

「カスハラ対策が義務化されると聞いたが、研修まで必要なのか」「何を、誰に、いつまでに教えればいいのか」——2026年10月1日の改正労働施策総合推進法の施行を前に、こうした疑問を抱える人事・総務・コンプライアンス担当者は少なくありません。
今回の法改正では、カスタマーハラスメント(カスハラ)への対策が、労働者を1人でも雇うすべての事業主の義務となります。中小企業向けの猶予期間(経過措置)は設けられていないため、規模を問わず、施行日までに社内体制を整える必要があります。
この記事では、カスハラ研修とは何か、法律で企業に求められる措置、研修に盛り込むべき内容、対象者別の設計、そして義務化までの具体的な進め方までを、これから準備を始める担当者に向けて体系的に解説します。
カスハラ対策義務化の根拠となるのが、改正された労働施策総合推進法です。2026年2月26日には、厚生労働省が「事業主が職場における顧客等の言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針」(令和8年厚生労働省告示第51号)を公布しました。この指針が、企業が具体的に何をすべきかの基準になります。施行日は2026年10月1日です。
今回の義務化は、労働者を1人でも雇用するすべての事業主が対象です。かつてパワハラ防止法が施行された際には中小企業に一定の猶予期間が設けられましたが、カスハラ対策については中小企業向けの経過措置が設けられていません。大企業・中小企業を問わず、2026年10月1日の施行に間に合うように準備を進める必要があります。
法律が直接「研修を実施せよ」と命じているわけではありません。しかし企業には「方針の明確化と周知」「相談体制の整備」「発生時の適切な対応」などが義務づけられます。これらを現場で実効性あるものにするには、従業員一人ひとりが「何がカスハラなのか」「どう対応すべきか」を理解している必要があります。その理解を全社に行き渡らせる最も現実的な手段が、カスハラ研修です。
厚労省の指針では、カスタマーハラスメントを次の3つの要素をすべて満たすものと定義しています。
顧客等の言動であること
業務の性質等に照らし、社会通念上許容される範囲を超えていること
その結果、労働者の就業環境が害されること
正当な苦情や要望など、社会通念上許容される範囲の申し入れはカスハラには当たりません。また、対面だけでなく、電話やSNSなどを通じた言動も対象に含まれます。
指針でいう「顧客等」には、商品の購入者やサービスの利用者、取引先の担当者、施設利用者やその家族、施設周辺の住民などが含まれます。さらに、今後取引する可能性がある者など、事業に関係する者も対象とされています。
指針は、問題となる言動を大きく2つに分類しています。
①要求内容が不当なもの:理由のない要求、業務と関係のない要求、契約内容を著しく超えるサービス要求、対応が著しく困難または不可能な要求、不当な損害賠償請求など。
②手段や態様が不当なもの:身体的攻撃(暴行・傷害)、精神的攻撃(脅迫・侮辱・暴言など)、土下座の強要、威圧的な言動、執拗な言動(同じ質問の繰り返しなど)、長時間の拘束(居座り・電話拘束など)。
いずれも典型例であり、実際に該当するかは個別の事情に照らして判断されます。この「線引き」の感覚を従業員間で共有することが、研修の大きな目的の一つです。
厚労省の指針では、事業主が講ずべき措置が整理されています。主なものは次のとおりです。
方針の明確化と周知では、カスハラには毅然と対応し労働者を守るという方針を明確にし周知します。あわせて、管理職への報告体制、一人で対応させない体制、録音・録画の活用、退店要求や電話切断の基準、警察への通報・本部への報告といった対応方法を、あらかじめ定めておく必要があります。
相談体制の整備では、相談窓口を設置し従業員に周知します。既存のハラスメント相談窓口と統合することも可能です。被害発生時だけでなく、発生のおそれがある場合や判断が難しいケースでも対応できる体制が求められます。
事後の迅速かつ適切な対応では、事実関係の迅速な確認、被害者への配慮(担当変更など)、再発防止措置を行います。犯罪に該当する可能性がある場合は警察への通報も想定されます。
抑止のための措置では、悪質なカスハラに対して、警察への通報、警告文の送付、商品・サービス提供の拒否、施設・店舗への出入り禁止、仮処分命令の申立てといった対応方針を事前に定め、実行できる体制を整えます。
併せて講ずべき措置として、相談者のプライバシー保護と、相談を理由とする不利益取扱いの禁止を、就業規則や社内規程で明確化し周知します。
このほか、自社の従業員が他社の従業員にカスハラを行い、相手企業から協力要請があった場合には協力に努めること、対策にあたっては消費者の権利や障害者差別解消法に基づく合理的配慮に留意すること(合理的配慮を求める申し出などはカスハラに該当しない)も示されています。
これらの措置は、規程を整えるだけでは機能しません。現場の従業員と管理職が内容を理解し実際に動けるようにして初めて意味を持ちます。カスハラ研修は、これらの措置を全社に浸透させ、実行可能な状態にするための取り組みです。
法改正と自社方針の理解:2026年10月施行の内容と自社の対応方針を全従業員で共有する。
カスハラの判断基準:3要素の定義と、該当する言動・該当しない正当な要望の具体例で線引きの感覚を養う。
現場での初期対応手順:一人で抱え込まない、管理職に報告する、録音・録画を活用する、退店要請や電話終了の基準に沿うなどをロールプレイで体得する。
相談窓口の使い方と事後対応:いつ・どこへ相談し、相談後に会社がどう動くかを周知する。
管理職向けの二次対応と部下のケア:報告を受けた際の判断、被害者への配慮、再発防止までを担えるようにする。
顧客・窓口対応の担当者:実際の場面を想定した初期対応とロールプレイ中心。
管理職・現場責任者:報告を受けた際の判断、悪質なケースの見極め、部下のケアと再発防止といった二次対応。
一般社員・バックオフィス・経営層:法改正の趣旨と自社方針の共有、通報・相談ルート、組織としての姿勢の理解。
現状把握:過去のクレーム・トラブル事例を洗い出し、想定されるカスハラを整理する。
方針の策定と規程整備:毅然と対応する方針を明文化し、就業規則にプライバシー保護・不利益取扱いの禁止などを盛り込む。
対応マニュアルの整備:報告体制、一人で対応させない運用、録音・録画、退店・電話終了・警察通報の基準を具体化する。
研修の実施:方針とマニュアルをもとに対象者別に研修を行い全社に浸透させる。
相談窓口の運用と見直し:窓口を稼働させ、相談・対応事例を踏まえて方針・マニュアル・研修内容を継続改善する。
研修は対象人数が多く日程調整も必要になるため、早めに着手することが施行日に間に合わせる鍵になります。
自社だけで法改正の正確な理解、判断基準の整理、実践的なロールプレイまで設計するのは負担が大きいものです。外部の研修サービスを選ぶ際は、次の2点を確認するとよいでしょう。
一つは、専門性の高い講師に依頼できるかです。カスハラ対応は法律・労務・接客対応など複数の知見が交わる領域のため、テーマに合った専門家を選べることが重要です。
もう一つは、全社員に短期間で行き渡らせられるかです。義務化は全従業員が対象のため、拠点や部署をまたいで一度に受講できる仕組みがあると効率的です。
オフィスクでは、最大500人が同時にライブ受講できるオンライン研修に対応しています。専門性の高い実務家講師が、豊富な経験を活かして、現場目線に寄り添った研修を行っています。
貴社・貴組合のニーズに合わせてカスタマイズすることも可能ですので、ご興味がありましたら、ぜひお気軽にお問い合わせください。
Q. カスハラ研修は法律上の義務ですか?
「研修の実施」そのものが条文に明記されているわけではありませんが、方針の周知・相談体制の整備・適切な対応といった義務を実効性あるものにするには研修が不可欠であり、対応の中核として位置づけられます。
Q. 中小企業にも義務化されますか?猶予はありますか?
労働者を1人でも雇用するすべての事業主が対象で、中小企業向けの経過措置は設けられていません。規模を問わず2026年10月1日の施行に備える必要があります。
Q. カスハラと正当なクレームはどう違いますか?
正当な苦情や要望など社会通念上許容される範囲の申し入れはカスハラに該当しません。3つの要素をすべて満たすかどうかで判断します。
Q. 電話やSNSでの言動も対象になりますか?
対象になります。対面に限らず、電話やSNSを通じた言動も含まれます。
2026年10月1日、改正労働施策総合推進法によりカスハラ対策が全企業の義務となります。中小企業向けの経過措置はなく、規模を問わずすべての事業主が対象です。求められる措置を現場で機能させる中核が「カスハラ研修」であり、法改正・自社方針の理解、判断基準、初期対応手順、相談窓口の使い方、管理職の二次対応の5要素を、対象者別に設計するのが効果的です。施行日から逆算して早めに着手し、専門講師と大人数同時受講に対応した外部研修サービスの活用も検討しましょう。
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