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AIと働く「生成AI活用」は、何が変わって、何が残る...

AIと働く「生成AI活用」は、何が変わって、何が残るのか ~講師歴20年の生成AIコーチ・西口晃司先生インタビュー~

  • 講師コラム

2026/7/28

シリーズ:AIと働く時代に、これから伸ばすべきスキル(第1回)

「AI時代、社員の皆様に何を学んでいただくべきか」。いま、多くの人事担当者様が同じ問いをお持ちだと思います。生成AIに任せられる仕事は着実に増えています。その一方で、人だからこそ担える役割も、少しずつ見えてきました。

今回お話を伺ったのは、オフィスクで生成AI研修を数多く担当されている西口晃司先生です。IT企業で20年以上、社会人向け研修を手がけ、現在はChatGPT・Copilot・Gemini・Claudeなど複数ツールの実践講座を企業様向けに実施されています。研修現場のリアルな変化から、それでも人に残る役割、そしてその力の育て方まで、じっくりお聞きしました。

受講者様が「前のめり」に。研修現場で起きている変化

ー生成AIをめぐって、研修の現場で感じていらっしゃる変化を教えてください。

西口先生: 生成AIの研修は、いま本当に増えています。そして、提供している側が言うのも何なのですが、これまでの研修は「会社から受けてきなさいと言われたから来ました」という方が結構多かったのです。そういうとき、受講者様はなかなか前のめりにはなりません。

ところが、最近の生成AIの研修に関しては、皆様がとても前のめりです。真剣に聞いてくださいますし、質問もたくさん飛び交います。「AIを使っていかないといけない」という感覚が、だいぶ広まってきた。これが大きな変化だと感じています。

ー受講者様からの質問の中身も、変わってきていますか。

西口先生: 変わりましたね。2年前や1年半前は、「プロンプトって何ですか」というところから始まることもありました。最近は、代わりにご自身の業務に照らして「こんなことはできますか」という質問が増えています

ー業種や職種によって、受け止め方に温度差はあるのでしょうか。

西口先生: そこは、ないですね。製造業もありますし、人材派遣さん、金融さんもありますが、AIに関しては全然温度差がないんです。皆様が積極的に取り組まれています。

だからこそ、研修のやり方もだいぶ変わりました。お客様からも「もっとAIに触りたい」というお声のほうが大きいので、講義を聞くだけではなく、手を動かすワークショップ的な時間をより多く取るようになりました。

情報収集は「一瞬」に。生成AIで変わった仕事

ー生成AIの登場で、これまで人がやっていた仕事のうち、任せられるようになったのはどんなことでしょうか。

西口先生: まとめると、一番効率が上がったのは情報収集ですね。

たとえば、生成AIのトレンドを調べるとします。これまでならGoogleを開いてキーワードを入れて、日本の情報だけでは物足りないから海外の情報まで引っ張ってきて、出てきたPDFを一つひとつ読んで…そのうえで「今のトレンドはこうだから、こういう世界観になっていくな」と考えていました。

いまは、ディープリサーチを使えば一瞬でまとめてくれます。思ったものと違うなとなれば、追加でちゃんと指示すれば修正してくれます。情報収集のスピードも精度も、そこが一番上がっていると思います。

ー定型業務と非定型業務では、どちらで効果が出やすいのでしょうか。

西口先生: 確かに強いのは定型業務です。ルールがある程度決まっていて、手順書もある。それをAIに覚え込ませればやりやすいので、「定型業務から始めましょう」というのは、いまは流れとして強いですね。

ただ、実はアイデア出しもAIはめちゃくちゃ強いんです。自分一人で考えていると、自分の経験の延長線上のアイデアしか出てきません。メンバーが5人集まっても、その5人の経験の延長線上です。だからこそAIにアイデアを出してもらうと、「そんなアイデアがあったか!」というものが出てきます。

ー逆に、過大評価されすぎだと感じる部分はありますか。

西口先生: 研修の中でもよく質問をいただくのですが、「一回で思いどおりの答えが返ってこない」という声ですね。もしかしたら世間一般では課題と捉えられているのかもしれません。

ただ、それはAIの限界というよりは、そういうものなのです。AIと対話しながら、少しずつ修正して作り上げていく。そこがやっぱり大事です。

【編集部補足】西口先生に聞いた、主要ツールの得意分野

インタビューでは、主要な生成AIツールの違いも伺いました。要点を整理します。

  • ChatGPT:アイデア出しも文章作成も得意な万能型。画像生成も向上。アプリ作成やホームページ作成など、機能追加のスピードも速い。

  • Gemini:最新情報の取得が得意。Googleマップとの連携が強く、出張計画などに便利。YouTube動画の要約も得意。

  • Copilot:Microsoft Officeとの相性が抜群。特にExcelでのデータ分析で性能を発揮。

  • Claude:日本語の文章がきれい。Claude Codeを使えば、プログラミングの知識がなくても日本語の指示でアプリが作れる。

それでも人に残るのは、「課題を見つける力」と「見極める力」

ーいろいろなものが自動化されていく中で、それでも人に残る役割は、どこにあるとお考えですか。

西口先生: まずは、課題を見つける力です。

AIを使うにしても、ご自身のタスクの中で「どこにこんな問題があるから、AIを使う」と考えないと、AIを使ったことによる効果が見えないんですよね。だいたいのことはAIでできるのですが、何でもかんでもAIを使えばいいかというと、そうではない。AIでなくてもできるところもあります。だからこそ、問いを立てる力、課題を見つける力がすごく求められます

ー「課題を見つける」とは、たとえばどういうことでしょうか。

西口先生: お仕事をしていると、ちょっと厄介な問い合わせや難しそうな仕事が来たときに、「これだったら○○さんに聞けば大丈夫」ということがあると思うんです。その場では仕事はちゃんと回っていて、何の問題もないように見えます。

でも、実は「○○さんしか知らないこと」というのは課題なのです

わかりやすく言うと、その○○さんが来年定年を迎えられるとします。○○さんがいなくなったら、私たちはどうするのか。そうなれば、○○さんが持っているノウハウや知見をデータベースとして作って、AIに覚え込ませて、いわば「○○AIさん」を作っておけば、○○さんが定年退職されても、同じようなことをAIがやってくれる。

普段は何も困っているように見えないけれど、実はそれって課題ですよね、と気づいてほしいのです。

ーもう一つの「見極める力」についても教えてください。

西口先生: AIが生成したものを見極めるところは、やっぱり人じゃないとダメですね。AIに「事実確認して」と言えばできることはできます。でも、AIが作ってきたものが、自分の業務や事業にちゃんとマッチしているか。それは自分で、人が判断するところです。そこは絶対に残ります

※「見極める力」については、西口先生ご自身の解説コラムも公開されています。あわせてご覧ください。

生成AI時代に会社員が身に着けるべきスキルとは|最重要は「生成物を見極める力」

使いこなす人の共通点は、「抵抗感のなさ」と「考えてから使う姿勢」

ー同じツールを使っても、成果には差が出ます。生成AIを使いこなしている方に、共通点はありますか。

西口先生: 二つあると感じています。

一つは、新しいツールに抵抗感を持たない方です。これまでの経験上、別に使わなくても大丈夫、という方も一定数いらっしゃいます。でも、時代の流れとして、もう「使わない」という選択肢には戻らないと思います。そうなったときに、率先してどんどん使う気持ちを持っている方のほうが、やはり早く使いこなされていますね。

二つ目は、AIを使う前に、三つのことを絶対に自分の頭で考えている方です。三つとは、目的と、現状と、条件です。何のためにこのAIを使うのか。いまの現状はどうなのか。出力してほしい条件は何なのか。この三つを自分で考えて指示をしないと、本当に一般的な答えしか返ってきません。目的・現状・条件をきちっと考えながらAIを使う方が、伸びています

「何でも質問してください」。その力を育てる研修の役割

ー独学でも情報は手に入る時代です。あえて研修という形を取る意味は、どこにあるとお考えですか。

西口先生: 必要なことを、わかりやすく理解できるのが研修の場だと思っています。プラス、研修なので失敗してもいい。ワークショップで、試行錯誤のプロセスを受講者様ご自身に体験いただけるところです。

確かにYouTubeやWebに情報はいっぱいあります。でも、いっぱいあるがゆえに、何が大切で、何を信じればいいのか、そこから始まってしまうのですよね。独学でもいいのですが、2時間でも3時間でも研修を受けていただいたほうが、必要な情報をきちっと学べる。そこが研修の役割かなと思います。

あとは、「AIに聞いてみる」という発想にならない方も、まだ結構多いです。「AIに聞いていいの?」というところから、一歩目をお手伝いできるのも研修の価値だと思います。

ー研修を実施されるうえで、特に意識されていることはありますか。

西口先生: 三つ気をつけていることがあります。

一つ目は、難しい言葉を使わないこと。私自身はIT業界なので専門用語には慣れているのですが、生成AIの研修はエンジニアの方だけが受けるものではなく、ビジネスサイドの方も受けていただきます。そこで専門用語を話し出すと、一瞬で皆様ぽかんとされてしまいますので、なるべくわかりやすく話すことを一番心がけています。

二つ目は、手を動かしていただく時間をより多く確保すること。オンライン研修が多いのですが、オンラインだとしても、皆様に手を動かしていただいて、少しでも体験いただく時間を設けています。

三つ目は、質問しやすい空気感づくりです。体験ワークでいっぱい使ってもらえばもらうほど、聞きたいことも出てくると思います。ただ、日本人の特性として、質問はあまりしない傾向が強い。皆様「こんなこと聞いていいかな」と思って質問をやめてしまいます。だからこそ「いいですよ、何でも質問してください」と伝えて、質問しやすい空間づくりに気をつけています。

【編集後記】

「AIを使うか否か」は、もう論点ではなくなりました。西口先生のお話から見えてきたのは、その先にある、とても実務的な問いです。自分の仕事のどこに課題があるのかを見つけ、AIの成果物を見極め、目的・現状・条件を考えてから使う。生成AIが当たり前になるほど、こうした「人の側の力」が成果の差になっていきます。

印象的だったのは、「○○さんしか知らないことは、実は課題」というお話でした。普段は困っているように見えない場所にこそ、AI活用の種がある。この視点は、ツールの操作方法だけでは決して身につきません。現場で20年以上教えてこられた西口先生だからこその、実践知だと感じます。

そしてその力は、失敗してもよい場で、手を動かしながら育つもの。「何でも質問してください」という西口先生の研修は、皆様の組織の「一歩目」を後押しする場になるはずです。

なお、組織として生成AIをどう根付かせるか(心理的安全性・共有の文化・管理職の関わり方)についても、西口先生にたっぷり伺いました。続編の記事でお届けします。

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本記事は、2026年6月29日に実施したインタビューをもとに構成しています。発言は読みやすさのため一部整えています。

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