HOMEkeyboard_arrow_right記事一覧keyboard_arrow_right

AIと働く「Excel・業務効率化」は、何が変わって...

AIと働く「Excel・業務効率化」は、何が変わって、何が残るのか ~Excel講師・業務改善の実務家 大平知佳先生インタビュー~

  • リスキリング

  • DX推進

  • 講師コラム

2026/10/1

シリーズ:AIと働く時代に、これから伸ばすべきスキル(第2回)

「生成AIが関数もコードも書いてくれるなら、Excelはもう学ばなくていいのではないか」。そう考えたことのある方は、少なくないと思います。

大平先生は、新聞社の記者から転職し、上場企業の事業企画部へ。配属当時、Excelのスキルはほぼゼロだったといいます。そこから日々の学習と効率化を積み重ね、いまは教える側に立っていらっしゃいます。

そして現在、大平先生の活動は研修だけにとどまりません。企業の現場に自ら入り込み、生成AIを使った業務改善の支援も手がけていらっしゃいます。研修で語られることのほとんどが、いま現場で起きていることです。

教える側と、実務側。その両方から見えている景色を、じっくりお聞きしました。

「AIで何とかできないか」。現場から来る相談は、たいてい漠然としている

ー研修と、企業でのご支援と、ご自身の活動。いまは、どのような比率になっているのでしょうか。

大平先生: 企業様のご支援がメインです。さらに、自分でアプリを作るなど、AIを使った様々な活動。残りが研修、という感じになりますね。

企業様のお手伝いとしてやっているのは、まさに生成AIによる業務効率化です。Claudeなどを使って「これとこれを連携してみたら」「こういう風に組めないか」と考える。一方で、地道なルーチン業務をどうしたらコツコツ片づけられるか、ということもやっています。

ー研修専業ではなく、実際に現場に立ちながら教えていらっしゃる。だから机上の空論にならない。オフィスクとしても、そこが強みだと感じています。

大平先生: 本当にそうだと思います。こういった、AI活用の相談は現場から上がってくることが多いです。まったく使ったことがない、というわけでもないのですが、ChatGPTやGeminiを少し触っている方もいる。でも、それが業務改善や業務効率化につながっているかというと、まだ試しに使ってみる段階にとどまっているケースも多いです。そこからどうやって業務につなげていくか、というご相談が中心です。

相談の最初は「AIで何とかできないか」という、わりと漠然とした形で来ます。「これとこれを使ったらこうできるはずだから、それをやって」という具体的な形ではないんですね。

ーそういう漠然としたお題が来たとき、どんな順番で整理されるのですか。

大平先生: 最初は必ず現状確認です。実際にやりたいとおっしゃっているものが、本当にAIでどうにかなるものなのか。それとも、そもそもExcelなど既存のツールで十分に解決できるものなのか。まず、そこを見ます。

そのとき、外部のコンサルタントとして「教えてください」とお声がけいただいて入ることもあります。ただ、人が足りないとおっしゃっている現場では、「それなら、やりながら作っていこう」という感じで、自分もその業務をしながら効率化を進めることが多いです。

その業務を体系的に説明できる方が、社内にいらっしゃるとは限りません。自分でやってみることで「ここがブラックボックス」「ここは間違いやすいところ」と見つけていく。そのほうが、コンサルタントに伝えるために、クライアント様が整理して受け渡しをするプロセスが発生しない分スムーズですね。

「AIがあるから、Excelはもういらない」とは、ならなかった

ー生成AIが登場して、Excelの位置づけは変わったと感じますか。

大平先生: 変わらないなと思うことと、変わっていくな、あるいは変わらなければいけないなと思うこと。その両方があります。

変わらないほうから言うと、「どう操作するか」だけではなく「なぜその作業が必要なのか」「何のためにするのか」ということです。Excelの研修のときもそうですし、生成AIでもそう。昔から、大切にお伝えしてきた部分です。

Excelはあくまでツールですよ、と言ってきました。生成AIも、まったく同じです。AIもツールです、と言ったときに、結局は「では何のための業務なのか」「何を成し遂げたいのか」に立ち返る。これは生成AIに限らず、他のどんなシステムでも同じです。そこがちゃんと詰められているかどうかは、何を使うにしても変わらず大事です。

ーでは、変わっていくほうはいかがでしょうか。

大平先生: 「AIがあるのに、なぜExcelを学ぶのか」というところだと思います。

実は、これは私自身が最初に思ったことでもありますが、「AIもあるのに、なぜ今もExcelを学びたいという方が多いんだろう」と。AIが関数を書いてくれるなら、関数を覚える必要もないし、以前より楽にできるじゃないか、と。

ただ、実際にご依頼を受けて研修をしていくと、まだまだ生成AIもExcelも使いこなせていないという現状が、すごくよく分かりました。

Excelやデータの基本的な考え方を理解していないと、そもそもAIに何を頼めばいいのか分からない、ということにつながります。AIが出してきた答えをどう使えばいいか分からない。正しいかどうかの検証の仕方も分からない。

ですから、Excelの基本的なデータの構造や整理の仕方が分かっていないと、AIに指示することもできませんし、出てきた結果の判断もできなくなってしまう。「AIがあるからExcelを学ぶ人がいなくなる」というよりも、「AIを使いこなすためにこそ、Excelやデータの基本的な理解が必要になる」。改めて、そう思っているところです。

Excelは「柔軟性のあるツール」、思考の速度で作業ができる

ー大平先生ご自身は、いまExcelと生成AIをどう使い分けていらっしゃいますか。

大平先生: 私の場合、「Excelで集計しよう」「数字でちょっと見たいな」と思ったら、Excelでやってしまいます。実は、そこでAIは使いません。そちらのほうが早いので。

それと、Excelのいいところの一つが柔軟性なんです。

「ここも集計してみよう」「こういう切り口だったらどうかな」ということを、関数を入れながらスムーズに試せる。「あれ、これは違ったな」ということもできる。

データを活用した分析や試行錯誤は、Excelで自分が手を動かしながらやります。すでにできているもので、数字を更新するだけなら、AIを入れるまでもありません。

生成AIを使うのは、「自分はこれがいいと思ったんだけど、本当?」という確かめ算をしたいときですね。あとは、集計の上にさらに質的な分析をかけていくとき。自分が見た中で足りない視点がないかを、もう1人に多角的に見てもらうような感じで使うことが多いかもしれません。

ーいま「柔軟性」という言葉が出ましたが、Excelにその印象を持っている方は少ない気がします。むしろ、数式を少し間違えるとうまく動かない、ルールでガチガチのもの、というイメージが強いのではないでしょうか。

大平先生: これも原体験になってしまうのですが、私がExcelを活用し始めたときに、ほぼショートカットキーでやっていたんです。マウスを使わない。

ショートカットキーを使い、マウスを使わないことが何を意味するかというと、ただ早く操作できる、ということだけではないんです。

自分が考えているスピードで手が動いて、目の前の表が変わる。「ここにこれを入れよう」と言っている瞬間に、もう列が入っている。思考の速度と作業の速度が一致しているので、すごく処理しやすいんですよね。

セルを増やす、減らす、計算の仕方を少し変えてみる、関数を変える。ここからここまでをコピーして計算を入れる。そういうことが、自分が思えば即座にその通りにできるんです。

Excelで何ができるか分かっていて、それが自分の思考と同じように、流れるように操作できると、すごく柔軟性がある。かっちり作り込まれたシステムより、自分でExcelでやったほうが早い、ということが出てくるんですよね。

ーそれは、速度だけの話ではないですね。

大平先生: そうなんです。速度だけではなく、質にも本当に転化されていると思います。

人に残るのは、「決めること」と「責任を持つこと」

ー生成AIに任せられる範囲は、いまどこまで広がっているとお考えですか。

大平先生: かなり広いと思っています。関数をどうするとか、コードを書くとか、データを整理するとか。

以前なら、そのスキルを自分が習得してからでないとできなかったこと。それが、ほぼAIと対話しながら実行できるのかなと思っています。

ーでは、人に残る役割はどこにあるでしょうか。

大平先生: 前提として、永遠にこれは人だ、というわけではありません。人も変わっていきますし、AIも変わっていきます。ですから、あくまで現時点で思うこと、ですが——

目的を決めること。問いを立てること。結果を評価すること。最終的に判断をすること。そして、その判断に責任を持つこと。この5つだと思っています。

複数のAIがそれぞれ答えを出してきたり、一つのAIが「これはこうだと思います」と言ってきたりします。でも、それが本当に自分にとっていい答えなのか。それを採用するかどうかを決めるのは、自分です。

そして、その判断ができるかどうか。判断するために必要な知力を自分は持っているか。そこが問われている、という感じですね。

AI活用の差は、「自分は何をしたいか」から生まれる

ー同じツールを使っても、成果には差が出ます。使いこなす方と、そうでない方の差はどこにあるのでしょうか。

大平先生: いま、ChatGPTなどを「使っています」という方はたくさんいらっしゃいます。ただ、その「使っている」の中身が問題で。「◯◯はありますか」「◯◯をするにはどうしたらいいですか」というハウツーを、イエス・ノーで聞いている段階。そこにとどまっていることが、多くあります。自分が見えないものを見に行く、というような問いをしているところまでは、まだ行っていない方が多いと聞きます。

その差がどこから来るかというと、そもそも対AIというより、対人、対仕事、そういういろいろなものへの姿勢がどうであるかによっていると思います。

何をやりたいのかが見えていない方にとっては、どう使おうとも、やることは見えてきません。だから、使おうという気持ちにもなりにくい。「自分はこれがやりたいんだ」という思いが強い人ほど、ツールであっても使いこなしていく。その要因が大きいような気がします。

ーとはいえ、「何のためにやるのか」を考えること自体が、意外と難しいのかもしれません。

大平先生: そうですね。私の場合は、全部、人生というか自分の生き方に直結しているんです。

仕事は仕事で、この与えられたAからCを淡々とやりましょう、ではなくて。AからCと言われたけれど、私はDがやりたいんだけどな、ということがあったら、いかにAからCを圧縮するかを考える。

仕事をするうえでも、自分がそこで何を得たいのか、何を実現したいのかを考えることは大切だと思っています。仕事で得たいものが、得られているのか。得たいものが見えていないのであれば、本当は自分が何を得たいのかを考えないと、自分の人生をより良くする仕事のあり方には、短い距離では行きにくいのかなと思っています。

これは、私が経営側にいたからこそ思うことでもあるんですけれども。

従業員の方々は、組織のことを思って動いてくださることは、もちろんあります。でも、本当はやりたくないなと思っていたり、本当は苦手なことを抱えながらやっていたり、いろいろあるんですね。

そういうときに、ご本人の「そう、これがやりたかった」「これはやってみたい」とワクワクして目が光るようなことと、組織が求めることが一致しないと、力を発揮しにくいことがあります。辞めてしまうこともありますし、同じ研修を受けても、なんだか頭に入ってこないな、になってしまう。

「知らないからできない」の壁は、確実に低くなった

ー大平先生ご自身も、最初からExcelが使えたわけではないと伺いました。

大平先生: Excelに限らず、パソコンのスキルもそうだと思うのですが、自分にできないことって、想像できないじゃないですか。

ショートカットが使えるのがどういう状態なのか、どれだけ早くなるのか、実感が湧きにくい。だから、まったく知らない状態だと「なんだか良さそうだけど、踏み出しにくい」となる。おそらく、当時の私もそう感じていたと思うんですよね。Excelを素早くカタカタ操作している人が、なんだか特別な人みたいに見えていました。

でも、自分自身が一つずつ身につけてきた経験があるからこそ、「特別なことではなく、練習すれば身につけられる」と実感しています。その感覚を持って、初めての方にも安心して取り組んでいただけるようにお伝えしています。

ーその引き出しは、どのように増やされたのでしょうか。

大平先生: 私自身も、教わることで吸収しました。パソコンが得意な人がカタカタやっていて、隣の画面を見たら、ものすごいスピードで動いている。その光景に驚くところから始まりました。

私の場合は、元外資系金融機関で働いていた方が上司で、Excelが得意だったので、作業している画面を覗くと、そこで学べたんです。あとは、独学し、本も読みました。インプットをかなり意識してやっていた時代もあります。

ー最後に、これから学ぼうとする方へ、お伝えしたいことはありますか。

大平先生: 「筋肉は裏切らない」ではないですけれど、「Excelの練習は裏切らない」という感覚があります。

研修の中でもショートカットキーの一覧をお見せして、「こうやって練習するんですよ」というお話をしています。これは私自身の経験として、1週間でいいので、毎日10分か15分続けるだけでも、本当に変わります。

筋トレみたいなものなので、やってみていただくと、意外に効果を感じられる。「あ、ちょっと自分でもできたかも」と思えるようになるかなと思います。

【編集後記】

「AIがあるのに、なぜExcelを学ぶのか」。この問いに、大平先生は「最初は自分も同じことを思った」と率直に答えてくださいました。そのうえでの答えが、「AIを使いこなすためにこそ、Excelの理解が要る」ということです。AIに何を頼めばいいか分からない。出てきた答えが正しいか検証できない。つまずくのは、操作の手前にある理解の部分でした。

そして、人に残るのは「目的を決める、問いを立てる、結果を評価する、判断する、責任を持つ」こと。どれも、ツールの操作を覚えるだけでは身につきません。社員の皆様に何を学んでいただくかを考えるとき、この5つを育てる場になっているかどうかが、一つの基準になりそうです。

なお、「3回やるなら仕組みにする」という業務の仕組み化の考え方、さらに生成AI時代に学び方そのものがどう変わるかについても、たっぷり伺いました。続編の記事でお届けします。

※後編はこちら: 3回やるなら、仕組みにする|AI時代に「作業」を「仕組み」へ変える考え方 ~大平知佳先生インタビュー(続編)~

大平知佳先生の研修について

大平知佳先生の研修について、詳しくはこちらからご覧いただけます。

大平知佳先生の講師ページ

関連する研修コースも公開されています。

貴社の課題に合わせて、研修を設計します

オフィスクでは、各分野の現役実務家が、貴社の課題に合わせて研修を設計します。「自社の場合はどうすればよいか」という段階から、ご相談いただけます。まずは、現状をお聞かせください。

お問い合わせはこちら

本記事は、2026年9月25日に実施したインタビューをもとに構成しています。発言は読みやすさのため一部整えています。

この記事を読んだ方に おすすめの研修・コース

この記事を書いた人

オフィスク 編集部

「明日から役立つスキル専門」の企業研修サービス「オフィスク」の公式編集部。実際の研修風景や成果がリアルにわかる「研修実施レポート」をはじめ、社内育成や研修運営に今すぐ活かせる「人事向けTips(ノウハウ)」、他社の動向や最新の「研修トレンド情報」を発信しています。現場の即戦力化と、研修担当者のみなさまの運用の効率化・課題解決をサポートする有益な情報をお届けします。

おすすめの研修・コース

人気おすすめ記事

オフィスクとは?

企業内大学、リスキリング研修、人材育成向けに、明日から使えるビジネススキル講座やチームビルディング研修をオンラインLIVEセミナー形式で提供しています。豊富な実績と高い指導力を兼ね備えた安心の講師陣が、効率良くインタラクティブな学習を企業の社員向けに提供します。
見逃し動画アーカイブオプションあり!​​ポータブルビジネススキル、仕事効率化から、デジタル活用法やテレワークコミュニケーションまで、DX時代に有用な豊富な講座のラインアップを用意。
新卒研修、企業内大学、労働組合セミナーなどにもお役立ていただけます。

お問い合わせはこちら

keyboard_arrow_right

導入用途・活用シーン

企業内大学のシリーズ講座に

企業内大学の立ち上げ、さらなる研修コンテンツの拡充にもご活用いただけます。企業様のテーマに合わせて自由に組み合わせることも可能です。

リスキリング/DXの研修に

リスキリングやDX推進に向けて、AIをはじめ、ITやデザイン等、業界トップランカーによる業務に直結した実践的なスキル研修としてご利用いただけます。

組織の生産性向上に

テレワーク導入中の組織において、オンラインを活用したコミュニケーションの活性化、生産性向上のスキル向上にご活用いただけます。

オフィスクの講師陣の特徴

実力派講師が登壇

ビジネスの第一線で活躍した実務者でもある高新人の中から受講者の評価が高い選りすぐりの講師が登壇します。

ベストセラー著者も在籍

ビジネス書から実用書まで、ベストセラー著者も在籍しています。あの著者のセミナーに直接受講できるのもオフィスクの魅力です。

豊富なオンライン登壇実績

オンラインセミナー経験が豊富な講師陣が多数在籍。オンラインでもグループディスカッションからQ&Aまで対面の研修と同じクオリティの研修をご提供いたします。

講師一覧を見る

keyboard_arrow_right

明日から使えるスキル研修ならオフィスク

研修に関するお問い合わせ、資料のご請求はこちらから承っております

お問い合わせはこちら

keyboard_arrow_right